ヴェルディ「レクイエム」 コンセルトヘボウ公演

★遠藤個人ブログ「ひろいあつめたはなびら」より

 

 

さかのぼること約2年。ウィーンでのヴェルディ・レクイエム公演に向けての練習会場で、焼津にお住まいのSさんからお声を掛けて頂いたのが始まり。「とってもいい合唱団と指揮者の先生がいるので、ぜひ紹介したいんだけど」
それから1年をかけて、企画を練りこみ、パンフレットが完成。
1年4ヶ月たった、今年の4月からとうとう合唱の練習が始まりました。現地のオケのこと、ジョイントする合唱団のこと、練習の進め方、プログラムのこと・・・いろんなことを、指揮者の先生と何度もお会いして、時には酒を酌み交わしながら、お互いの信頼を深め、内容を丁寧に詰めていった日々。長いようで、振り返るとあっという間、ってのはこのことなのでしょうね・・・

指揮者の先生が指導される合唱団の方々のご協力をいただきながら、練習は楽しく厳しく進んで・・・多くの混声合唱団に漏れず、男声が少ないのが悩みでした。特に、練習に出てこられるメンバーとなると、さらに男声の数が少ない・・・女声も練習ではだいたい20人くらいでしたから、ヴェルレクの練習にしては、なかなか厳しい環境だったと思います。
今までの私は、裏方専門となり、本番はおろか、合唱練習に参加することもなかったわけですが、今回は周りの方々と先生に背中を押されて、まずは練習から参加することに。それでも、本番では、添乗チーフ、ステマネ、現地コーディネーターとの折衝、などなどの仕事があるので、舞台に立つことはないだろうと思いながら、「これも勉強のため」と歌い始めたのです。
しかし・・・・・・・・・・・
練習に容赦はなかった・・・・・・・・
時にはテノールが3人とか、1人とか・・・そんな時でも、ビシッとパートごとに立たされて歌う。合唱初体験の人間としては、なかなか厳しいわけですよ。発声練習も初体験なわけで・・・
なかなか音が取れない時なんかは、女声の方たちがそっと一緒に声を出してくれたりして、すごく助けていただいたのがうれしかったです。練習を外から見ていた時とは違って、同じ合唱団の仲間という意識が生まれていた感じがしました・・・
そんな助けをいただきながら、だんだんと歌えるようになった頃から「あぁ、叶うものなら歌ってみたいなぁ」と思い始めましたが、やっぱり本番では、全体の流れをしっかり作ることが最優先。仕事でやっている以上、自分の願望など後回しです。それでも、歌うのが気持ちいいなぁ、って結構楽しんでましたね。

そんなこんなの日々を過ごしていくと、いつの間にか11月になり、ツアーの出発を迎えます。

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アムステルダムでは、国立美術館でレンブラントやフェルメールを堪能。レンブラントの「夜警」は素晴らしかったですね。フェルメールの「牛乳を注ぐ女」は日本に出張中でしたが・・・
アムステルダム郊外のハーレムでの演奏日には、少し早めに(と言っても、朝はゆっくりですが)バスで現地入り。小さな町ですが、モーツァルトが弾いたパイプオルガンを擁する聖バフォ聖堂やら古い街並みを、各自思い思いに歩き回って、けっこうリラックスして頂けた様子。

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今回のコンサートでは、ウクライナの首都キエフからオケと合唱団が合流。どちらもプロです。キエフ・オペラ合唱団のコーラス・マスター、アンジェラさんによる合唱練習は、日本の私たちから見ても分かりやすくて魅力的でしたね。表現の仕方、声の出し方、イメージの作り方が、日本での練習にも結構似ていたりして、素直に受け入れやすくて、最後の練習として、すっごく効果があった気がします!

最終的に、マエストロから、私の舞台デビューのOKをいただき、
ならば!ということで、
ハーレムのコンサートでは、裏方の仕事を同行のスタッフに慣れてもらうため、私は舞台には出ずに、「裏方シミュレーション」を。大体の流れとコツを把握してもらって、コンセルトヘボウでの運営において、私が舞台に出ても支障が出ないように細心の注意を。実際に自分が出来る仕事と、任せていく仕事を分けて、任せる仕事に集中して、担当してもらう。当然、舞台上のことは私がやらねば、なので、スタッフのみんなには合唱団の方々の誘導を担当してもらいました。コンセルトヘボウでも、しっかりとやってくれたので、感謝感謝です。誘導に関して、ほとんど不安なく任せていられたのは、自分にとっては、とってもやりやすかったなぁ。
無事に合唱団の皆さんが地階の楽屋から、ステージドアのある2階(あちらでは1階と表記しますが)に誘導されるのを横目に、「Conductor Room」で指揮者と最後のおしゃべり。そのまま、エレベーターでマエストロ専用控え室に上がり(行き方は内緒)、あとをホールのスタッフに任せて、私は合唱団に合流。入場の順番で少し混乱する方もいらっしゃったようですが、もう一度説明して、さぁ、不安をなくして、いざ入場!このホールは、ステージ裏の上から客席を正面に下りてくる、という入場経路なので、かなりの緊張感があります。何しろ、ドアをくぐった瞬間から、真正面に観客と向き合うわけですから・・・でも、意外と気持ちいいんです。これ。
同じように、指揮者も上からの入場となるわけですが、これは気持ちよくてたまらない(私は経験してませんが)。まさに宝塚のヒロイン状態なわけです。


さて、
最初のppp
きれいに、やさしく入れるか
はいった!
これが決まれば、後は気が少し楽になって、のびのびと歌える。
実際、ソプラノからの高音の美しいこと!アルトのしっかりした土台に、しっかり音が乗っている感じ。男声は近すぎだから、全体の声は分かりませんでしたが、後ろにいたウクライナの方やTIVEの誇るTさんの安定感抜群の声に押されて、これまでのどんな練習よりも、力まずに、息に声が乗って出て行っている感覚を感じることが出来たのが、驚きでした。私たちの声がホールの高い天井に上っていって、ふわっと広がっていく感じ。そうか!すごいホールで歌うと、こんなにも力を入れずに素直に声が出るものなのか!と身をもって体験!
さすがに、Libera meの最後の盛り上がりは、力が入ってしまいましたが、なんか、観客までもが一緒に合唱に加わっているような、ものすごい一体感を感じ、最高の高揚とともに、フィナーレへと・・・

それまでは、自分で作った企画で歌ったり演奏していただいた方々からの、「とってもよかった」「すごい感動した」という感想をお聞きして、「そうか、企画した甲斐があったなぁ」と満足していたものですが、実際に舞台に立ち、お客様たちが経験する時間を共有し、その瞬間を味わったことは、かけがえのない貴重な経験になりました。いままで漠然と見ていた皆さんの「感動」を、自分の体で、心で感じた瞬間・・・言葉に出来ません・・・
ほんとに言葉に出来ないんです・・・

今回、合唱練習を、皆さんと一緒に歩んで、怒られた時も、ほめられた時も、一緒の場所で気持ちを共有できたからこそ、皆さんの気持ちが味わえたことを、本当にうれしく思っています。レジェンド・オブ・ヴェルディ合唱団の皆さんは、私にとってはお客様でありますが、それ以上に仲間という感覚があります。

演奏が終わった瞬間の観客全員のスタンディング・オベイション。次から次へと飛び交うブラヴォーの声。その瞬間を皆さんと分かち合えた事を、私は誇りに思います。
本当に本当にありがとうございました。そして、またいつの日か、練習会場でお会いしましょう。願わくば、また舞台をご一緒したいです。